降圧薬の「種類」の違いが、血圧低下とは独立して認知症リスクに影響するかについては、十分に明らかになっていなかった。今回、統計数理研究所/総合研究大学院大学の野間 久史氏らが実施した65歳以上を対象とした標的試験エミュレーションの結果、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の新規開始はカルシウム拮抗薬(CCB)の新規開始に比べて、認知症、とくに血管性認知症のリスクが低いことが示された。Alzheimer’s & Dementia誌2026年8月号に掲載。
本研究では、19自治体の医療・健診情報を統合した約505万人の大規模医療データベースであるLIFE Studyの2014年4月~2024年9月のデータから、新規にARBまたはCCBによる高血圧治療を開始した65歳以上の認知症ではない成人を対象に、標的試験エミュレーションによりARB開始群とCCB開始群の認知症リスクを比較した。打ち切りや競合する死亡イベントを考慮し、重み付け離散時間ハザードモデルを用いてintention-to-treatおよびper-protocol効果を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・最終的に5万2,019例(ARB群1万7,860例、CCB群3万4,159例)が解析対象となり、追跡期間中央値3.6年の間に3,524件の新規認知症が確認された。
・達成された血圧レベルが同等であったにもかかわらず、ARB群はCCB群と比較して認知症全体の発症リスクが低かった(ハザード比[HR]:0.916、95%信頼区間[CI]:0.852~0.985)。
・血管性認知症(129イベント)では、ARB群でより大きなリスク低下が認められた(HR:0.617、95%CI:0.409~0.930)。
・アルツハイマー病(2,231イベント)では、ARB群で低い傾向は認められたものの、統計学的に有意ではなかった(HR:0.930、95%CI:0.849~1.018)。
・5年後の認知症累積発症率は、ARB群が8.0%、CCB群が8.8%であった。
・治療中の収縮期血圧および拡張期血圧は両群でほぼ同等であった。
著者らは、「これらの結果は、ARB群で認められた認知症リスクの低下が、より血圧が下がったことだけでは説明しにくいことを示している。とくに血管性認知症で強い関連がみられたことから、ARBが脳血管の老化、微小血管障害、血管内皮障害などに影響する可能性が考えられる」と考察している。
(ケアネット 金沢 浩子)